寒露

 十月四日は十五夜でした。残念ながら雲が厚くてお月さんが顔を出しません。来月一日の十三夜はどうでしょうか。それはさておき、

 十月八日からは二十四節季の寒露、露が冷たく感じられてくるころです。空気が澄み、夜空に寒々と月が明るむころ……なんだけど、前述のようにせっかくの満月は拝むことができませんでした。

 秋の日の釣瓶落とし。秋が深まり、日が傾いてきたかなと思うと、あっという間に空が茜に染まり、日が沈んでしまいます。散歩とかポタリングでも気をつけたほうがよいでしょう。

 七十二侯の寒露初侯は、鴻雁来る(がんきたる)。雁が来たから渡ってくるころです。その年初めて訪れる雁を初雁(はつかり)といいます。また、晩秋、雁が海を渡ってくるころに吹く北風を雁渡し(かりわたし)、または青北風(あおきた)といいます。

 七十二侯の寒露次候は、菊花開く(きっかひらく)。菊の花が咲きはじめるころです。

 旧暦九月九日(今年は十月二十八日)の重陽の日摘んだ菊の花びらを詰め物にし、菊枕(きくまくら)にします。また、菊の花が咲くころに青空が晴れ渡ることを、菊晴れといいます。さらに、菊に降りた朝露で体をぬぐう菊の被綿(きせわた)を行い長寿を願いました。

 五穀豊穣に感謝して、その年とれた米の初穂を天照大神に奉る伊勢神宮の祭が神嘗祭です。

 七十二侯の寒路末候は、蟋蟀(きりぎりす)戸にあり。キリギリスが戸口で鳴くころです。山野に出かけて虫の声を楽しむのが虫聞き(むしきき)です。

 秋も深まってきました。


  出典 白井明大=文・有賀一広=絵『日本の七十二侯を楽しむ』(東邦出版)