立秋

 八月七日からは二十四節季の立秋です。はじめた秋の気配がほの見えるころです。季節が巡るのははやいですね。暑い盛りですが、これ以降は夏の名残の残暑といいます。

 七十二侯立秋初侯は、涼風至る(りょうふういたる)。涼しい風がはじめて立つころです。夏の気配をすぐそばに感じる、という意味の夏の季語が、秋隣(あきとなり)。

 七十二侯立秋次候は、寒蝉鳴く(ひぐらしなく)。カナカナ……とひぐらしが鳴くころです。

 七十二侯立秋末候は、蒙霧升降す(のうむしょうこうす)。深い霧が立ちこめるころです。春は霞みたち、秋は霧けぶる空模様。

 このころの夜空にはかつて豊作を占った星があります。赤く輝く旱星(ひでりぼし)と呼ばれる星です。火星、牛飼座アルクトゥルス蠍座のアンタレスです。アンタレスが赤く輝くほど、その年は豊作になると言われたそうです。あまりにも真っ赤なアンタレスには酒酔い星という別名もあるようです。

 濃い霧の林を歩いていると、木の葉から雨が落ちてくることがあります。これが樹雨(きさめ)です。


  出典 白井明大=文・有賀一広=絵『日本の七十二侯を楽しむ』(東邦出版)