夏至

 六月二十一日からは二十四節季の夏至、一年でもっとも日が長く、夜が短いころである。これから夏の盛りへと、暑さが日に日に増していきます。

 七十二侯に夏至初侯は、乃東枯れる(なつかれくさかれる)。うつぼぐさの花穂(かすい)が黒ずんで枯れたように見えるころです。といいながら、わたくしめ〝うつぼぐさ〟に馴染みがありませぬ。

 房総半島から伊豆半島にかけての地方では、梅雨の季節に吹く湿った南風を〝流し〟というそうです。また、九州や四国では梅雨そのものを〝流し〟と呼ぶこともあるとか。

 七十二侯の夏至次候は、菖蒲(あやめ)華さく。あやめが花を咲かせるころです。

 初夏、あおあおとした木々の葉に振りたまった雨が、ぱたぱたと落ちてくることを〝青時雨〟といいます。、また、新緑の上をびゅうっと福勢いのある風を〝青嵐(あおあらし)〟といいます。むかし、そんな名の政治団体があったような気もしますが(笑)

 六月と十二月には罪や穢れを落とす穢れの行事があり、六月の大祓を〝名越しの祓(なごしのはらえ)〟といいます。神社では茅草(ちぐさ)で作った輪が立てられ茅の輪(ちのわ)くぐりを行います。水無月という和菓子を食べます。

 七十二侯の夏至末候は、半夏生ず(はんげしょうず)。半夏(からすびしゃく)が生えはじめるころです。田植えを終わらせる、農耕の節目とされます。

 夏至から数えて十一日目が半夏生(はんげしょう)。田植えを済ませた農家が、休息をとる日です。この半夏生の日に降る雨を、半夏雨といいますが、この日の天気によって一年の豊作を占う習慣があったとか。


  出典 白井明大=文・有賀一広=絵『日本の七十二侯を楽しむ』(東邦出版)