小満

 五月二十一日からは二十四節季の小満、いのちが、しだいに満ちてくるころである。草木も花々も鳥も虫も獣も人も、日を浴びて輝く季節です。

 七十二侯の小満初侯は、蚕起きて桑を食う。蚕がクワの葉をいっぱい食べて育つころです。

 旧暦の四月は、蚕のえさであるクワの葉を摘むころという意味で「木の葉採り月」とも呼ばれています。

 水を張った棚田の上にぽっかり月がうかびます。なだらかな斜面に段々になって広がる大小の田んぼの水面に、月影が映し出されていくさまを「田毎(たごと)の月」と表現しています。

 七十二侯の小満次候は、紅花(べにばな)栄う。紅花が一面に咲くころです。

 七十二侯の小満末候は、麦秋(ばくしゅう)至る。麦の秋、すなわち麦が熟して収穫するころです。

 刈り取りを末麦畑は、一面の小金色。そんな麦秋の時期に麦の穂を揺らし、吹き渡っていく風を「麦嵐(むぎあらし)」といいます。またこの頃降る雨を「麦雨(ばくう)」といいます。



  出典 白井明大=文・有賀一広=絵『日本の七十二侯を楽しむ』(東邦出版)