テレビ

 隠居生活をはじめていろいろと変わってきたことがある。テレビをよく観るようになったのもそのひとつ。

 生まれたころにはテレビはなかった。小学校低学年のころ、東京タワーが建ったころにわが家にテレビがやってきた。たちまち夢中になってテレビを観た。学校での話題も前日のテレビの話が一番。

 かくして、五、六年はテレビに夢中だった。ところが東京オリンピックが終わったころからテレビ離れがはじまった。テレビがおもしろくなかったわけではないと思う。受験勉強なども多少は影響しているかも。勉強に時間を当てるため、なにかの時間を減らす。友だちづきあいの時間は減らないで、テレビを観る時間が減っていった。

 テレビというのは観なければ観ないで済むものだった。以後、高校、大学、サラリーマン時代はほとんどテレビを観ることがなかった。この中で、大学時代はテレビを持てなかったので観たくとも観られなかった。それ以外は、家にテレビはあったけれど強いて観ようとはしなかった。

 といったテレビ離れの状態で長い年月を過ごしてきた。ところが隠居後である。気がついたらテレビをよく観ている。もっとも、観るもののほとんどは録画したものである。放映時にはみないで、自分の都合に合わせて観たい時に観ている。が、そうこうするうちに録画するスペースがなくなり、次に録画するためにには、すでに録画したものを消さなければならない自転車操業の状態に陥ってしまった。これはなかなかきついものがある。現在はこんな調子である。