穀雨

 四月二十日からは二十四節季の穀雨(こくう)、たくさんの穀物をうるおす春の雨が降るころです。この季節の終わりには夏のはじまりを告げる八十八夜がおとづれます。夏はすぐそこ、季節が変わるのは早いものです。

 七十二侯の穀雨初侯は、葭(あし)始めて生ず。水辺の葦(あし)が芽を吹きはじめるころです。葦の若芽のことを葦芽(あしかび)といいます。葦の角、葦の錐とも言われています。

 七十二侯の穀雨次候は、霜止んで苗出。霜の覆いがとれ、健やかに苗が育つころです。種籾が芽吹き、すくすくとあおあおと伸びていきます。

 五日に一度風が吹き、十日に一度雨が降るような順調な天気のことを五風十雨といいます。転じて、世の中が平穏無事という意味でも使われています。

 七十二侯の穀雨末候は、牡丹華さく。牡丹の花が咲き出すころです。

 五月二日は立春から数えて八十八日目、八十八夜です。農の吉日です。とはいえ、五月の初めに不意に冷え込む夜があって、霜が降ったら農作物が大変です。くれぐれも油断しないようにと、八十八夜の忘れ霜といわれています。

 春の雨にはいろいろな種類があって、それぞれに名前がついています。瑞雨、甘雨、春霖、催花雨、菜種梅雨、卯の花腐(くた)し、百の雨、など。


  出典 白井明大=文・有賀一広=絵『日本の七十二侯を楽しむ』(東邦出版)