清明

 四月四日からは二十四節季の清明(せいめい)です。すべてのものが清らかで生き生きするころです、若葉が萌え、花が咲き、鳥が歌い舞う、生命が輝く季節の到来です。

 七十二侯清明の初侯は、玄鳥至る(つばめきたる)。海を渡って、つばめが南からやってくるころです。粋な江戸っ子の初鰹の時期でもあります。暦日の四月八日はお釈迦様の誕生日、灌仏会花祭りです。

 七十二侯清明の次候は、鴻雁(がん)北へかえる。日が暖かくなり、雁が北へ帰っていくころです。春先の北国の曇り空を鳥曇(とりぐもり)というそうです。また、鳥の群れが羽ばたく羽音が、風の鳴るように聞こえ、鳥風(とりかぜ)と呼ばれます。
 
 雁は海を渡る時に、海上で休むための小枝を加えて飛ぶと言われています。来る時に加えてきた小枝を帰る時にまた加えて行くそうです。日本で命尽き、帰って行くことのできない雁が加えてきた小枝は浜に残されています。浜のひとは供養のために枝で焚いた風呂を旅人に振る舞ったそうです。これが雁風呂です。

 七十二侯清明の末候は、虹始めて見る。春の雨上がり、空にはじめて虹がかかるころです。

 中国では、春分前に摘まれた茶葉を分前茶、清明が訪れる前に摘んだ茶葉を明前茶、清明のころに摘んだ茶葉を雨前茶と区別しているそうです。


  出典 白井明大=文・有賀一広=絵『日本の七十二侯を楽しむ』(東邦出版)