寒露

 十月八日からは、二十節季の寒露です。露が冷たく感じられてくるころです。空気が澄み、夜空にさえざえと月が明るむ季節です。

 旧暦の九月九日、ことしの新暦では十月九日は重陽節句、菊の節句です。

 七十二侯の寒露初侯は、鴻雁(がん)来る。雁が北から渡ってくるころです。その年初めて訪れる雁を、初雁(はつかり)といいます。また、雁が海を渡ってくるころに吹く北風を、雁渡し、または青北風(あおきた)といいます。

 七十二侯の寒露次候は、菊花開く。菊の花が咲きはじめるころです。菊の花の咲くころに青空が晴れ渡ることを、菊晴れといいます。

 また、五穀豊穣に感謝して、その年とれた米の初穂を天照大神に奉る伊勢神宮の祭が、神嘗(かんなめ)祭です。もともとは旧暦の九月十七日に行われていましたが、いまは新暦の十月十七日に行われています。

 七十二侯の寒路末候は、蟋蟀(こおろぎ)戸に在り。キリギリスが戸口で鳴くころです。

 秋が深まってきました。秋の日の釣瓶落とし。日が暮れるのも早くなってきます。


  出典 白井明大=文・有賀一広=絵『日本の七十二侯を楽しむ』(東邦出版)