読書の姿勢

 車中の読書をのぞけば、本というのは仰向けに寝転んで胸で下端を支えるような姿勢で読んでいた。そこそこの量を読むようになって以来、おそらくは四十年以上ずっとこの姿勢だった。

 ところが、最近この姿勢が辛くなってきた。理由はいくつかある。

 ひとつは明るさがいまひとつ足らないように思われること。枕元のスタンドで照らしているのだが、ちょっと照度が足らないような気がする。加齢効果で読書に従来以上の明るさが必要になってきたのだろう。

 読書には眼鏡が必要なのだが、仰向けに寝転がると眼鏡のつるの耳にかかる部分が押されてずれてしまうことがある。ただし、これはこれまでもずっと同じ条件だったはずで、どうして最近なって気になりだしたのかはわからない。

 また、仰向けというのはリラックスした姿勢である。だから、かどうかはわからないが、いろんなことが頭に浮かんでくる。で、本に集中できなくなってくる。目は文字を追いながら、頭では別のことを考えている。で、本に何が書いてあったか、まったくわからなくなってしまうことがままある。が、これもいまに始まったことではない。が、加齢とともに集中力が激減しているのは自覚している。

 まあ、理由はともかく寝転がって読むのが辛くなってきた。

 そこで、机に正対し、書見台に本を置いて読んでみたら、すこぶる調子が良い。この書見台、数十年前に買ったものだが、一時期書類置きにしていたほかは使ったことがなかった。ずいぶんともったいないことをしていたものだ。まあ、過ぎたことはしかたないとして、いまさらではあるが、好ましい読書の姿勢が見つかって喜んでいる。