葛の恐怖

 遠くない将来、クズが植物界を制覇するような気がしてなりません。

 ツル植物であるクズは自立する必要はありません。なので、他の植物が自立に要するエネルギーを成長と増殖に当てることができます。グングン大きくなって増えていきます。樹木や草花に覆い被さり日光を独り占めしてしまいます。多年草のクズは冬でも枯れることはありません。クズに覆われた植物は冬を待っても陽の光を得ることはできません。衰退の一途です。

 クズの特技は巻き付くことばかりではありません。巻き付くものがなければ、仲間同士身をより合わせ立ち上がっていきます。

 また、上に向かって伸びるばかりではありません。下にぶら下がっていくのもお茶の子さいさい。

 実際にこうして葛が制覇した斜面をあちこちで見かけます。

 クズに勝てそうなのは、女王ラフレシアのような寄生植物。他の植物の栄養を吸い取る根も茎もない花、すなわち生殖器だけの植物。これにはさすがのクズも負けそうです。だけど花が開くのはいっときだけ。そのときだけ我慢すればよい。しかも、いまのところクズに寄生する植物は見当たりません。無敵です。

 どうでしょう、クズが植物界の覇者になるような気がしませんか?

 葛の根っこから作る葛切り、くず湯、くず餅などは、上品で上等、美味な食べものです。現在では、くず餅などは葛井阿外の原料、ジャガイモなどからも作っているようです。でも、クズは猛烈に増えています。なので、どんどん本物を食しましょう。

 いや、クズを敵視するわけではありませんが。