グルメ番組

 グルメ番組がやたら放送されている。タレントと称するやからが、どこかでなにかを食べながら感想などを述べる番組である。

 この感想には耳を覆いたくなるものが多い。明らかに語彙が不足しているのだ。なので誰がしゃべっても同じ言葉になってしまう。

 「食感が……」「甘さ控えめで……」「さっぱり(あっさり)していて……」「肉汁がぁ……」「ジューシーで……」「フルーティで……」「ご飯が欲しくなる」。あげくのはては、食べ物をほおばったまま「おいひぃ!」。下品ですねえ。

 概ね、こんなところで収まってしまう。ほかの表現の仕方もあるだろうに、そんなことは知るよしもなし。おいしさの着眼点はほかにもあるだろうが、そんなことには気がつかない。お粗末至極である。

 一番ひどいのが「完食しました」。美味しかったから全部食べました、というつもりなのだろう。が、普通は全部食べるもの。お残しはいけません。完食が当たり前。わざわざ言うことではない。テレビの撮影では、全部食べるのはまれで、ちょっと箸をつけただけで次へいくのが普通なのだろう。なので、そこを留まって完食するのは特別なことなのかもしれない。でもね、それは、テレビの撮影という特殊な状況での話。あたかもそれが一般的であるかのように語るのはどうかしている。

 と悪口を書いたが、唯一(かどうかはわからないが)『孤独のグルメ』だけは別。この番組の独白的感想はまったくもって素晴らしい。プロの表現者としてはこれくらいのことを言って欲しい。