睡眠が気持ち良いのは……

 眠ることは素敵だ。夜ぐっすりと眠れれば言うことない。昼寝はすごぶる心地よい。うたた寝もまた気持ちよい。

 そんなに気持ちが良いのならずっと寝ていればよいかと言えばそんなことはない。気持ちよさを感じるのは起きてからである。気持ちよさは覚醒時の感覚である。

 おそらくは寝ていることが気持ち良いのではない。もしそうならば、目覚めることなくずっと寝ていれば良い。よくよく考えてみればそれは死である。死ぬことが一番気持ち良いことになってしまう。本当に気持ち良いならそれで良いかも知れないが……。

 が、残念ながら、あるいは幸運にも、それは違う。

 目覚めてから、直前の眠りを振り返り、その心地よさを後追いで感じるのだ。眠りが気持ち良いと感じるのは、あくまでも覚醒時の感覚である。

 とまあ、こんな当たり前のことに、いま初めて気がついた。