さきに死ぬことが悔しい

 人生も大詰めに近づいて、わかってきたことがある。といっても、おおげさなことではない。それは、先に死ぬのが悔しいということ。

 他人の人生、うらやましいと思ったり、ときには妬みを感じたりすることもあるが、そのひとが先に死んでしまえばそこでうらやましさや妬みは消えてしまう。相手が死んだとき自分が生きていれば、してやったりの感覚が芽生えそうな感じがしている。

 人生勝ち負けでは測れないけれど、勝ち負けを感じることもある。

 これまでの人生、わたしよりはるかにうまく生きてきた奴はたくさんいる。大いに嫉妬する。いまになって奴らに勝つ術はない。いや、ひとつだけある。それは奴らより長生きすること。どんなにうまく生きた奴でもそいつが死んだときには、逆転勝利感を味わうことができる。とても嫌な性格だとは思うけれど。

 逆に自分より先まで生きているひとには大いなる妬みを感じてしまいそうだ。もっとも、実際には、死んでしまえば妬みもくそもないのだが。