処暑

 二十四節気処暑。暑さが少しやわらぐころ。朝の風や夜の虫の声に、秋の気配が漂い出します。

 七十二侯処暑初侯は、綿柎(わたのはなしべ)開くころ。柎は実を包む萼(がく)のことです。綿毛をほぐし、綿の糸を紡ぎます。すだち、かさごが旬。富士山のお山じまいである吉田の火祭りもあります。

 処暑次候は、天地始めて粛(さむ)し。ようやく暑さが収まりはじめるころ。夏の気が落ち着き、万物があらたまる時期です。野分(のわき)の季節、二百十日もあります。ぐちやぶどうが旬です。

 処暑末候は禾乃登(こくものみの)る。禾とは、稲などの穀物の穂先に生えている毛のことですが、稲や麦、稗、粟などの穀物の総称でもあります。田に稲が実り、穂を垂らすころです。鰯や無花果(いちじく)が食べ頃で、松虫が鳴きはじめます。ますます秋ですね。

  出典:白井明大・有賀一広『日本の七十二候を楽しむ』『東邦出版』