立秋

 まだまだ暑い日が続くけれど、季節は着実に巡り、二十四節季では立秋となる。夏が終わり、秋の始まりである。初めて秋の気配がほの見えるころである。なお、これ以降の夏の名残は残暑というとのこと。暑中見舞いから残暑見舞いへと変わる時期である。

 七十二候の立秋初侯は、涼風至る。涼しい風が初めて立つころ。その風を秋のはじまりとみる。秋の気配をすぐそばに感じるという意味で秋隣(あきとなり)と言うそうだ。ん? ということは、まだ秋ではないのだろうか? いえいえ、秋隣は立秋に入る前までを指していたそうだ。立秋からは、むろん秋です。しじみ、桃がうまい季節。つゆくさが小さな花を咲かせること。

 次候は寒蝉なくころ。寒蝉は「ひぐらし」と読みます。夕暮れに「カナカナ……」とどこかはかなげな声で鳴く蝉ですね。はかなげではあるけれど、やや切れの良いするどい声ですね。ほおづきが色づき、京都では五山の送り火ですね。もっともこれは一ヶ月ずらした旧盆の行事ですが。

 立秋末候は蒙霧升降(もうむしょうこう)、濃い霧が立ちこめるころ。これは実感が薄いような気がします。樹雨(きさめ)というのもあるそうです。これは、濃い霧の林を歩いていると、木の葉にたまった霧のしずくが大きくなってパラパラと雨のように降ってくることだそうです。真蛸がうまく、新生姜がでまわります。

 出典:白井明大・在賀一広『日本の七十二候jを楽しむ」(東邦出版)