父の年齢

 気がついたら父の年を超えていた。なんとも奇妙な気持ちである。

 父はこんな年(いまの私の年齢)までしか生きられなかったのか。わがことを思えば、まだまだやりたいことがある。いまここで死んでしまっては、はなはだ心残りである。父はどうだったのだろうか?

 父の生涯は、戦争にいったりして波瀾万丈であったかも知れないが、だからといって、早く幕をおろして満足できるわけではない。むしろ、波瀾万丈であった分だけ、後半はゆったりとした人生を送りたかったものと思われる。

 父の生涯年齢を超えたことで、越えた分だけ、つまりこれから先の人生分だけ、父よりいろいろなことができるということになるのだろうか。

 それではないでしょうね。完全にひとそれぞれ。親子であろうとなんだろうと、比較してとやかく考えるものではないだろう。そもそも父の年齢を超えた分、という考えかた自体、何ら意味のあるものではない。

 と頭で考えればそうなのだが、わかってはいるものの、それでもやはり、ちょっとした感慨はある。