なかなか外出できない

 家人がみな出払ったあと、最後に家を出るのは手間がかかる。戸締まりをしたか。ガス、電気などを全部消したか。鍵をきちんとかけたか。

 そのひとつひとつが気になって、なかなか家から出られない。指差し喚呼したにもかかわらず、あとから不安になってくる。鍵のかけ忘れがあったのではなかろうか、テレビは消えていたか、ガスは見た目止まっていたが、細い火が点いていたような気がする。ひととおり確認が済んで、いざ出ようとすると最初に確認したことに自信が持てなくなってくる。そんな心配がつぎからつぎへと押し寄せてくる。それで最初からもう一度確認してまわる。これを何回か繰り返して、実は未だ納得できないけれどきりがないので諦めて、不安を抱えたまま家を出る。

 そのあとで、今度は玄関の戸締まりが気にかかる。鍵を押したか。玄関のドアを最後まで閉め切らず空いたままになってはいないだろうか。

 どうしても気になって引き返してしまうこともある。引き返せなくなってから、不安がどんどん募ってくるときもある。

 引き返して確認したり、用を済ませてから帰って確認しても、いまのところ忘れていたことはない。すべてちゃんとしていた。だけど、いつになっても不安はなくならない。心配性の極みなり。損な性格だ。