はじめてのシニア

 久しぶりに映画を観にいった。券を買おうとして料金を見たら、なんと六十歳から割引のシニア料金が適用されている。得したような、くすぐったいような、人生の残り時間を意識させられるような、複雑な感慨を抱いた。慣れないこともあって、妙な気分だ。

 還暦を過ぎてしばらくになるが、シニアの恩恵を受けたのはこれが初めて。JRの旅行などでも適用されるのがあるようだが、使ったことはない。電車で席を譲られたこともない。入場券や散髪料金などはたいがい六十五歳から割引になり、六十でも適用されるものはほとんどない。なので、自分がシニアであると、実感したこともあまりない。

 となると、六十から適応される映画の割引は貴重なものになる。もっと利用しよう(かな)。まあ、余計な感慨は持たず、単に〝得した〟と思うだけのほうが良い。シニアの自覚はぼちぼち持ったほうが良いかもしれない。