減らない残り時間

 いくつまで生きられるか、いくつまで健全でいられるか、まったくわからないが、一般的なところで〝八十歳〟くらいかなと思っている。いろんなことを考える際には、八十まで生きていることを基本としている。やりたいことも、資金計画も八十を前提にしている。

 それより早く死んでしまったらそれは運がなかったと諦めざるを得ない。もっとも死んでしまえば、諦めも口もありはしないだろうが。

 逆に八十以上に長らえて、老後資金が尽きてしまったら……。これは誰かになんとかして貰わなければならない。情けない話だが。

 というわけで、六十になったとき、人生の残り時間を二十年とみなし、二十年計画をぼんやり考えた。

 それから、既に何年か経った。人生の残り時間もそれだけ減ったはずである。が、なんということか、今もなお、人生の残り時間はあと二十年だと思いこんでいる。

 ちっとも減っていない。いや、なぜだかわからないが、減らすことができない。減らすのがもったいないってこともある。それが現実的ではないことは十分にわかっているのだが……。それでもなお、残りは二十年である。

 この調子でいくと、七十になってもあと二十年、八十になっても二十年残したまま死んでしまうのかも知れない。

 人間の心の持ち用なんて、こんなものなのだろう。