近ごろ寝付きが良くなった

 子どものころから寝付きが悪かった。布団の中で眠れずに悶々としていた。早く眠らなければ、と焦れば焦るほど眠れなくなってしまう。新聞配達の音を聞くまで眠れないことも珍しくはなかった。

 修学旅行などでも、一番最後まで眠れずにいた。

 成長しても寝付きの悪さは相変わらずだった。家人のいびきに悩まされるようになってからはなおさらだった。

 夫婦別室にしてからは、多少は改善されたが、それでも眠れぬ日々は少なくはなかった。

 そんな不眠状態が五十年、六十年と続いてきたが、どういうわけか、この一二年で変わってきた。

 早く眠れるようになってきた、といよりは、夕方六時を過ぎると眠くて仕方なくなってきた。食事、風呂、夕刊はなんとかこなせるが、パソコンはギリギリ。読書となるともういけません。うっかり目を閉じてしまうと、そのまま眠ってしまう。

 寝付きがよくなったと喜んでよいものか。そうではなくて、これもまたなにかよからぬことの付随症状ではなかろうか。

 いずれにせよ、寝付きが良いのは良いのだが、本を読みたい気持ちも失せてはいない。読みたい本を睡魔が邪魔するのは問題だ。