つい最近

 「つい最近」と言いかけて、待てよ、と言葉を飲み込む。ほんとうに最近なのかどうか確かめなければならない。いろんなことをたぐって、ようやくそれがいつごろのことかわかるようになる。その上で、それを〝最近〟といってよいかどうか判断することになる。随分と面倒くさい。

 いつのころからそうなったのか定かではない。過去の距離感が狂ってしまっている。過去のことは単に過去のことというだけで、どれくらい前のことだっか咄嗟には認識できないのだ。

 つい最近、と思っていたことが十年も前のことだったりするのもしばしば。この距離感の狂いは何が原因なのだろうか。

 また、この歳になると、〝最近〟という言葉はいったいどれくらいまで許容されるのだろうか。一年、二年? 五年、十年? それすらもわからなくなっている。

 まあ、済んだことと、これからのことくらいは、ちゃんと区別がつくのだが……。