年金の繰り下げ受給はお得?

 国民年金(老齢基礎年金)は原則として65歳から受給するのだが、これより早く貰ったり、当面要らないからといって遅く貰ったりすることができる。65歳より若くして貰いはじめれば、年間の受給額が所定の額より少なくなり、65歳より遅く貰いはじめれば多くなる。

 後者の場合、たとえば5年間我慢して70歳になってから貰いはじめると、年間の受給額はなんと4割強増加する。これは、無視できない増加率である。

 国民年金の場合、40年間支払って満額を受給すると現在では年間約80万円となる。これが4割増えるのだ。額にして三十万強。毎月3万円ほど増える。これは捨て置けない。

 はたして、70歳まで我慢できるか? 〝無理〟とあきらめたとき、ちょっとしたことに気がついた。

 確かに受給開始を繰り下げると、1年遅らせる毎に8.4%も年間の受給額が増加する。5年遅らせれば42%である。

 が、忘れてはいけないことがある。繰り下げない場合は60歳から受給していることを忘れてはいけない。満額約80万円を受給する場合、70歳までの5年間に4百万円受給することになる。どっちが得かよーく考えてみよう。

 受給額を積算してみると、65歳から受給した場合の積算額を、70歳受給開始の積算額が越えるのはなんと、81歳になってから。81歳以上生きれば得をする。長生きすればするほど得をする。が、80歳より前に死んでしまえば損をすることになる。80歳以上長生きできるかどうか。これはかけであり、リスクである。

 ところで、そのお得となる金額。81歳で3万円である。うーん、思ったほど大きくはない。リスクを冒すほどの額ではなさそう。もう少し長生きして85歳になれば137万円である。これならリスクに見合うかも。

 なかには、単純に4割も増えると思って、生涯受給額のことは考えずに繰り下げるひとも少なくはないような気がする。まあ、繰り下げても生活できる人はそうしていただき、一刻も早くお亡くなりいただくのが年金予算上好ましいのだが……。

 でも、そういう人に限って長生きし(金持ちは医療にも金を使えるので長生きする根拠はある)、結局のところ得をする。世の中、金持ちはますます得をする仕組みになっているようだ。

 さいごはまた、ひがみになってしまった。