無念無想の八月

 セミの声にはっとして、カレンダーを見たら八月も大分経っていることに気がついた。

 春に変わった環境に色んな不満が噴出する時期である。体力の消耗と相まって現状脱出の感が強まる時期である。

 昨年がまさにそうだった。八月はいやでいやで一刻も早く逃げ出したい気持ちで一杯だった。で、そのときに打ち切りを決意し、結局それをそのまま実行してしまった。後日多々後悔の念に駆られることも発生した。

 九月に入れば気候も和らぎ連休もある。昨年の場合は十月から遅番シフトの退勤時刻もぐっと早くなり楽になった。十、十一月も連休があり、そのあとは年末年始の休暇がある。

 と考えてみれば、六月から八月というのが一番辛い時期である。ことしはそのことがわかっているので、この期間は良し悪しやら、今後について何にも考えないことにする。よく言えば無念無想、端的に言えば、気がつかない振りして成り行き任せで一日一日が無事終わるのを待つことにする。

 いまさらながらの世渡りの知恵とも言える。だけど、この歳になってこんなことを考えなければならないとは、かえすがえすも情けない。