雨水

 二月十八日からは二十四節季の雨水、降る雪が雨へと変わり、氷が解け出すころです。昔からこの季節は農耕の準備をはじめる目安とされてきました。

 山の雪がゆっくり解け出して田畑や人をうるおす雪解けの水を雪汁(ゆきしる)または雪消(ゆきげ)の水と呼ぶそうです。ときに出水を伴うほどの奔流となるものを雪代(ゆきしろ)といい、雪汁で川や海が濁るさまを雪濁(ゆきにご)りというそうです。

 七十二侯の雨水初侯は、土脈潤い起こる。早春の暖かな雨が降り注ぎ、大地がうるおいめざめるころです。かあうそが魚を祭るとされているのはこのころです。

 七十二侯の雨水次候は、霞始めてたなびく。春霞がたなびき、山谷の情景に趣が加わるころです。

 野焼きの季節でもあります。二月二十五日は菅原道真の忌日で京都北野神社の祭礼、北野菜種御供(ごく)の日です。

 七十二侯の雨水末候は、草木萌え動く・しだいに和らぐ陽光の下、草木が芽吹き出すころです。冬の間に蓄えていた生命の息吹が外へ現れはじめる季節です。また、この時期に降る雨を、木の芽起こしといいます。

 まだまだ寒い日もありますが、確実に季節は巡っています。


  出典 白井明大=文・有賀一広=絵『日本の七十二侯を楽しむ』(東邦出版)