小満

 五月二十日からは二十四節季の夏の二番手、小満(しょうまん)です。いのちがしだいに満ち満ちてくるころです。草木も花々も鳥も虫も獣も人も、日を浴びてかがやく季節です。

 七十二侯の小満初侯は、蚕起きて桑を食う。蚕が桑の葉をいっぱい食べて育つころです。

 蚕の餌である桑の葉を摘むころなので、旧暦の四月には、木の葉取り月という別名もあるそうです。

 水を張った棚田の上にぽっかり月が浮かびます。山の斜面にだんだんになった、それぞれの田んぼごとに月が移ります。田んぼの数だけ月があります。これを田ごとの月といいます。風情のある言葉、風情のある光景ですね。

 五月の第三金曜から日曜の浅草は三社祭で賑わいます。

 小満次候は、紅花栄う。紅花が一面に咲きます。といってもわたしは紅花を見たことはありませんが(多分)。

 五月晴れというのは、本来は旧暦の五月のことで、うっとうしい梅雨の合間の晴れ間をさしていましたが、新暦になってからは、新暦五月のさわやかな青空をさすように変わったそうです。

 小満末候は、麦秋至る。麦の秋、すなわち麦を収穫するころです。

 六月からは衣替えですが、旧暦の時はいつだったのでしょうか。いや、その頃は衣替えの習慣はなかったのかも。


  (出典)白井明大『日本の七十二侯を楽しむ』(東邦出版)