寝付き
ずっと寝付きが悪かった。
布団に入ってもなかなか眠れなかった。眠ろうとすればするほど、眠れなくなる。眠れぬまま、朝刊が配達される音を聞くこともしばしば。
集団で雑魚寝のときなどは、最後まで眠れなかった。
まあ、そんな状態でも、まったく眠れなかったことは多分なかったと思う。最低でも一時間くらいは寝ただろう。
眠れない夜は、横になってあれこれ考えている。けっこう一生懸命考えている。一日で一番ものごとを考える時間である。もっとも、朝起きて思いだしてみると、くだらないことをウダウダと考えていたもんだと情けなくなることもしばしば。
とはいえ、不眠時間は貴重な思索時間でもあった。
それが、あるときから普通に眠りに入ることができるようになった。なにがどうなったのかはわからない。みずから意識してやったことはなにもない。
こうなると健康面では良いのだろが、いっぽうで、すっかり考えごとをしなくなってしまった。深く物事を考えることはなくなってしまった。これは良いことなのか悪いことなのかよくわからない。わからないけれど、ちょっとさびしい。
最近では横になって、布団の中の読書を楽しんでいるとすぐに眠くなってしまう。原因不明。やや、困りもんである。思索はおろか読書までできなくなってしまった。いかん、いかん。