新しいカメラ

 つい最近、と思っていたのだが、振り返ってみたら夏が来る前のことだった。これまで使っていたカメラがかなりくたびれてきたので新しいカメラを買った。デジイチデジタル一眼レフ)でもなければミラーレスでもない。レンズ一体型の普通のコンパクト・デジタル・カメラである。

 一眼レフは確かに綺麗な写真を撮ることができるけれど、その機能を活かすにはたくさんのレンズを持ち歩き、状況に応じて交換しなければならない。カメラをメモ帳代わりに使っているわたしには、持ち運びの負担が大きく、また性能・機能的には宝の持ち腐れでもあろう。なにより懐に厳しすぎる。

 機種選定基準は高倍率のズームレンズとファインダ付きの二点。該当するカメラはいくつかあったが、当時としてはおそらく最高の四十倍ズームレンズがつき、(光学式ではないが)電子式のファインダがついたニコンの製品に決めた。

 ニコン銀塩写真のころ、欲しくとも高くて手が出なかったニコンのカメラである。デジタルでは他社に比べて高いということはないが、昔の印象(負い目)をいまだに引きずっていて、それを持てるようになったことでリッチな気分を味わったりもしている。

 使ってみて、四十倍というのはとにかくすごい。撮りたいものはなんでも撮れる、といった気分になってくる。その後、キャノンから五十倍も出たようだが、これは見て見ぬふり。

 ファインダーも良い。写真はやはりファインダーをのぞいて写すものだ。腕を伸ばして背面の液晶を見るといった不安定な使いかたをすることはもうないだろう。

 が、このカメラ、その液晶がいろんな方向を向くようになっている。カメラを持ち上げて下から見ることもできれば、逆に下におろして上から見ることもできる。斜めにみることもできる。後ろをみることも(多分)できる。そのうち、そういった使いかたをすることもあるやもしれない。が、いまはとにかく百パーセント、ファインダーだ。

 それと思いもしなかった利点がある。このカメラはシャッターを切ると、一眼レフのフォーカルプレン・シャッターを切る音がする。疑似音ではあるが、カシャッ、カシャッという音を出すことができる。これがすこぶる気持ち良い。これはまったく意外だった。連写時には残念ながら音が出ないのだが、このときの物足りなさはかなりのものである。連写こそ、カシャッ、カシャッといきたいところなのに……。まあ、それはさておき、とにかく、シャッター音の爽快感はかなりのものである。

 不満もある。ピントがあいづらい。撮ってからわかるピンぼけもさることながら、撮影時に合わせたいところにどうしてもピントがあわないことがよくある。もしかしたらあわないのはファインダー上の問題で写した写真はきちんとあっているのかもしれない、と幽かに期待してシャッターを切っても見るが、結果はファインダー通りのピンぼけである。でもこれはうまい対策がありそうな気もする。思いつくことをあれこれ試してみよう。

 とまあ若干不満もあるものの、全体的には満足度の高い買い物だった。