スリッパ

 歯医者に通っている。このお医者さん、入口で靴を脱いで備え付けのスリッパに履き替えて待合室、診察室に入る。

 悩ましいことがある。治療を受けるために椅子に座るとき、このスリッパを脱ぐべきかどうか? 微妙なのは足の踵すなわちスリッパまで椅子に乗ってしまうこと。椅子を汚さない(という気遣いの)ためには脱いだほうがよいのかも。

 気をつけてみていると、スリッパを脱いで椅子に座るひとのほうが多いようだ。ちなみにわたしは履いたまま、脱ぎません。

 治療用の椅子をベッドと見なせば脱ぐのが当然だろう。とはいえ、椅子は椅子である。椅子に座るのにスリッパを脱ぐのは変だ。さて、どちらがただしいか。

 もし、スリッパに履き替えず、土足のまま椅子に座るのであれば、靴は脱がないだろう。土足でさえそうなのに、まして備え付けのスリッパである。椅子を汚す、などといった気遣いは不要のような気もする。さらに言えば、脱いだスリッパがお医者さんの邪魔になることだってある。

 というのがわたしが脱がない理由。といってもこれは後付けで考えたことである。そもそも、わたしには脱ぐことを思いつきもしなかった、というのが正直なところ。