再開します

 このブログ、十月に開設して以来、結構いい調子で書いていたのだが、年が明けて、二週間以上更新が滞ってしまった。原因はわたしの心理状態にある。どうしてもホイホイと書く気分にはなれなかったのだ。年末にあることに気がつき、わが人生最大と思われる閉塞状態に落ち込んでしまったのだ。

 いっときは回復の見通しがないのでは、と危惧していたのだが、時間の経過とか視点の変更というのはこんな場合でも効力があるようで、なんとか持ち直すことができた(と思っている)。

 自分自身の整理のために、この間の事情を簡単に振返ってみる。

 サラリーマン生活に終止符を打ったのは2006年の秋。それ以前からずっと隠居生活にあこがれていたのだがそう簡単に踏み切れるものではない。が、幸か不幸か、当時取り組んでいた仕事をそれ以上続けることの危険性を感じたこともあって、前後の見境もなく(財政的な見通しもなく)、珍しく即決の英断を下してしまった。

 しばらくは自由気ままな隠居生活を楽しんでいたのだが、ちょいとお金が足らないことに気がついた。当座の現金がないのだ。一年経てば満期になる預金があるので、必要なのはそれまでをしのぐ資金である。さほどの深刻感はなかったが、「無い」のは困る。

 といった状況のときに、今の仕事の募集があり、いろいろ幸運も重なって採用が決まった。一年半ぶりに働き始めることになる。

 ところがこの仕事、仕事そのものは問題ないというか、むしろ結構楽しいのだが、労働環境がよろしくない。問題はシフト勤務である。シフトには一日の出退勤時刻のシフトと曜日のシフトとがある。シフトがあることは最初からわかっていたのだが、頭で考えるのと実際に体験するのとでは大違い。特に夏場のシフトは過酷で、早くも逃げ出したい気持ちになってきた。でも、まあ、一年と期間も限っていることだしなんとか耐えようと思い直す。気晴らしを兼ねてはじめたのがこのブログである。

 秋になって契約更新の打診があり、迷わず打ち切りを宣言する。このときは、春からの隠居再開を思い浮かべて、浮き浮きしていた。

 どん底状態に陥ったのはその直後。それでは、ということで今後の資金計画を眺めていたら、とんでもないことに気がついてしまった。お金がまったく足らないことがわかったのだ。なんでいまさら……。

 老後の資金の一部を株と投資信託で持っている。これが大変な間違いを犯していた。資金計画を検討するときには、株はこれまでの平均的な価格、投資信託は購入時の価格で見ていたのだ。まったく無謀なことをしていたものだ。

 世界的な不況の中、株も投資信託も上記の半分以下の価値しかないことが判明。一気に血の気が引いていく。

 また、年金も老後資金の大きな割合を占めるのだが、これもなんら根拠なく適当に見繕っていた額が、ちょっと調べただけでとてもそこまではいかないことが明らかになってくる。落ち込みに追い討ちがかかる。不具合箇所が明瞭になるにしたがい、気持ちは暗くなってくる。

 いまさらそんなことがわかっても対策の打ちようがない。こんなときはどんなに悪かろうとも仕事を続けるのが鉄則なのだが、最悪のタイミングで更新を打ち切ったばかり。すでに後任の募集も行われており、いまさら取り消しもできない。

 まさに泣きっ面に蜂、出口のない閉塞感にさいなまされる。出るのはため息ばかり。陰湿な日々が続く。

 でも、ずっとそんな状態にいるわけにはいかない。脱出の方法を模索した。が、考えれば考えるほどうじうじするばかり。一向に出口は見えてこない。

 気分が晴れないまま、穏やかな天気の休日の午前中に海辺を散歩した。細い道を上り詰めると突然目の前に海が広がる。南向きの海は光を反射してきらきら輝いている。これを見て、あっというまに気持ちが晴れわたる。思考も前向きになってくる。

 そのとき、これまでどうして気がつかなかったのだろうという、些細な考えが浮かんだ。

 「資金が足らないのなら、支出を減らせばよいじゃないか」

 アイデアとはいえないような、まったく取るに足らない考えなのだが、気持ちが一気に軽くなる。

 いそいで帰って、資金計画の建て直し。資金をいじくるのではなく、使うほうを減らすのだ。いや、正確に言えば、資金がこれだけならこれだけ使えるという計算をしたに過ぎない。もちろん、年金の想定額も減らして。

 その結果わかったこと、年間の支出で言えば、それまで漠然と見積もっていた額から少し減らしただけで何とかなりそうなことが判明。なにしろ老後は二十五年程度をみているので、一年で四十万違えば一千万となる。月に三万ほど違うだけでそれだけ違ってくるのだ。月に三万減らすのなら可能性が感じられるが、資金をあと一千万を増やすとなると手の打ちようがない。

 これまでは、後者、資金の不足を補おうとして出口なしに陥り悶々としていたのだが、前者の方法をとれば先が開けてくるから不思議なものだ。年金についても社会保険庁に依頼して試算してもらった。

 よくよく考えてみれば、この間、状況はなんら変わっていない。それなのに気持ちの持ちようは大違い。もしかしたらとても重要なことに気がついたのかもしれないぞ。

 ということでブログを再開します。隠居生活への突入はやはり待ち遠しい。なのでカウントダウンも続けます。

 ただし、そうは言っても不安はぬぐいきれないので、仕事の募集情報にも目を配るつもりです。もしかした、隠居の前に、もう一度セミリタイアの時期が入り込むかもしれません。さてどうなることやら。


  ♪♪♪♪ 隠居開始まであと 72 日 ♪♪♪♪