清明次候

 四月十日からは七十二侯の、鴻雁北へかえる(がんきたへかえる)。日が暖かくない、雁が北へ帰っていくころです。

 秋に雁が海を渡ってくるとき、海辺に浮かべて休むために小枝をくわえてきます。次の春には同じ枝をくわえて、北へ帰って行きますが、浜にはまだ残った枝があります。それは、冬の間に亡くなった雁のもの。浜のひとは供養のために、枝で焚いた風呂を旅人にふるまいました。これが「雁風呂(がんぶろ)」です。切ないなあ……

 雁が群れをなし、薄曇りの空の下、北の海を渡っていく姿を眺めると、旅の厳しさに胸を締め付けられる思いがします。そんな春先の曇り空を「鳥曇(とりぐもり)」といいます。