息切れ

 発車寸前の時刻になっているのに気がついたのは改札を通り抜けようとして時計を見上げたとき。

 改札を抜けて走る。エスカレータを駆け上る。階段を駆け下りる。ホームを走る。電車に滑り込む。背後でドアが閉まる。ぎりぎり間に合った。ほっとして席に腰掛ける。

 息が弾んでいる。なかなか治まらない。我が“肺”はここまで衰えていたのか。風邪の影響も少しはあるのだろうか。あると思いたい。風邪でもないのにこれではちょいと大変だ。

 呼吸が少し落ち着いてふと気がついた。やっぱり風邪のせいだ。といっても風邪で呼吸機能が落ちているわけではない。

 実は……。マスクをつけていたのだ。マスクをしたまま走っていたのだ。高地トレーニングをシミュレーションしているようなものだ。

 でも、ほんと? マスクを外せば大丈夫だった? こわいからそれは確かめないことに。